不登校とは

 不登校とは、からだの病気や経済的事情などではなく、心理的な要因で登校できない、または登校しようとしない状態で、登校拒否、学校嫌いなどさまざまな呼びかたがされています。

 そして稚園から大学まで児童・青年期のあらゆる年代での不登校がみられ、さまざまな情緒的な問題を持つ子ども達が、学校という場に対するある種の反応としてあらわす行動の一つが不登校です。その中でも義務教育である小学校と中学校での不登校が重要で、この数は年々増えている傾向にあります。

不登校の原因として

 本人の性格的な問題(子どもの悩みや葛藤)、家庭的要因(両親の養育態度や対応の仕方)、学校側の要因などが複雑に絡み合って、「不登校」という状態が形作られています。つまり不登校傾向は、以前いわれていたような特殊な児童や特殊な家庭的背景に起こるという考えから、だれにでも起こりうる問題というように変わってきました。

不登校の症状としては

 最初は、登校時間になると頭痛や腹痛を訴え、親もからだの病気かもしれないと思わせられます。しかし休む連絡をするとそのような症状はまもなくなり、一見元気になり翌日は登校すると言たりします。そのような状態が続いて不登校が長引くと、朝なかなか起きずに昼近くまで寝ていて日中は家の中で好きなことをして過ごすようになります。そして子どもの心の中にはしだいに不安や罪悪感が生じてきます。

 そのような時期に登校をうながすと、逆に家族に反抗したり、特に母親に対する乱暴がみられるようになり(時には家庭内暴力が生じることがあります。)、無理難題をいい始めます。また、そのような葛藤を避けるように部屋の閉じこもり(引きこもり状態)、不登校が長期化することがあります。

不登校はなにを意味しているのか

 こころの発達の過程で、どの子ども達もさまざまな困難を経験しますが、それを乗り越えることによってさらに成長していきます。しかし今の子ども達には、乗り越えるべき問題が多過ぎてハードルが高過ぎるようです。
不登校の子どもは、学校での挫折・いじめなどの体験をきっかけに、問題を乗り越えることができなく、学校から逃避し家庭の中に閉じこもってしまいます。

 そのように子ども達を家庭に閉じこもらせてしまうような要因が、現在の学校教育や地域社会、さらに家庭の中にあることが問題であり、「登校しない」ということが両親や教師を最も悩ませる出来事となってしまったところにも問題があります。

 いろいろな悩みを持つ子どもは、さまざまな行動を症状としてあらわしてもよいはずですし、なぜ「不登校」だけが子どもにとっての「最強のカード」になってしまったのでしょうか。

 情緒的な問題を持つ子どもが学校で嫌な体験をしますと、まず身体的な症状を訴えて登校できないことを両親に伝えようとします。(初期)

  • たいていの場合、小児科を訪れて診察を受けますが、自律神経失調症、起立性循環障害、過敏性大腸炎などと診断されたり、「たいしたことはありません」といわれます。病名を告げられた子どもの両親は、「病気のせいなら仕方がない」と納得しますし、「たいしたことありません」といわれた両親は、「病気でもないのにずる休みしている」と叱りつけ、無理に登校させようとします。

 学校にいけない状態が続きますと、子どもはいらいらし、家族が学校のことを話題にすると激しく興奮し、乱暴したり、物を壊したりします。(興奮期)

  • この時期の子どもは、まさにせっぱ詰まった状態に追い込まれており、両親の誤った対応に「危険信号」を出し、一刻も早い救いの手を求めます。
     折角危険信号を出して問題に気づいてもらおうとしても、両親が当惑して、腫れ物に触るような態度をとり続けていると、子どもは疲れきってしまい、危険信号も出さなくなります。

 そして昼夜が逆転した生活となり、気力を失い、家族から も孤立した無為な日々を過ごすようになります。(慢性期)

 こような不登校や引きこもり状態になった場合は、医療的なレベルで対応することは少なく、所属している学校の担任・主任そしてスクールカウンセラーや教育関連の機関が対応することが多いです。またフリースクールなどの社会施設もしだいに増え、学校が唯一の教育機関であるというイメージが変わりつつあり、さらに民間の心理カウンセラーを活用するなど、個で支えるのではなく地域で支えることが重要な課題となってきています。

精神疾患との違いは

 当該生徒が神経症・うつ病・統合失調症のような精神疾患にかかっており、不登校の症状の1つと思われるときや、睡眠相後退症候群のような睡眠覚醒リズム障害が原因していると考えられるようなケースのときです。そのような場合は、適切な治療で不登校の問題の解決がはかられるよう児童精神科医や臨床心理士により、不登校児の心理状態や家族診断が受けられれば、その後の対処が適切になることが期待できます。

  • 主な精神疾患とは、
    • 統合失調症(10代の後半から30代の半ばにかけて発症することが多く、一般的には100~120人に1人がかかると言われており、決してまれな病気ではありません。症状は個人差が大きく、またきわめて多彩であり、妄想・幻覚・思考障害・自我意識障害・ひきこもり・感情の平板化・無関心などがあげられます)。
    • 躁うつ病《気分または感情障害に分類》(「うつ」の時期は、「気分が落ち込み、何をしても楽しくない」・「何に対しても意欲や興味がなくなる」などの症状が現れます。また、「夜中に何度も目が覚める、朝早くに目が覚める」といったような不眠の症状も認められます。また、身体的な症状として、食欲がなくなり体重が減少する、便秘や動悸がひどくなるなどがあります。逆に、「そう」の時期は「睡眠時間が短くなる」・「気分が高揚し、意欲が異常に高まる」などの症状が出現します)。
    • その他の精神疾患(パニック障害・強迫神経症・外傷後ストレス障害(PTSD)やてんかん・摂食障害などがあります)。
  • 厚生労働省の統計によると精神障害者は全国で約204万人といわれており、決して特別な人だけがなる病気ではありません。

どこに相談に行ったらよいのか?

 不登校や家庭内暴力は、両親がその扱いに最も苦慮する問題です。頭ではわかっていても実際に子どもと向かい合っているとつい“カー”となって感情的になります。そういう時こそ、気軽に心理カウンセラーに相談して下さい。

 また最近では、学校以外の場で、いろいろな経験を通して互いに成長しようとする「フリー・スクール」などが、各地に増えていますので活用するのも一つの方法です。

 公的な機関としては、教育研究所や教育相談室、青少年相談センター、児童相談所、 精神保健センターなどがありますのでご相談下さい。