ココロとからだは、つながっている
わたしたちのココロとからだはつながっています。ストレスが溜まると身体に不具合が出ることが多々あります。それを解消しないとうつや神経症などの症状として出てくる場合があります。
子どもも同じです。特に親や先生から叱られたらどうしよう、と思うと返事できなくなる、または「はい」と大人が気に入るような返事をします。しかし「行きたくない」「やりたくない」という気持ちが解消されているわけではありません。たんに子どもの中にストレスが溜まる一方です。
つまり言葉と気持ちに差が生じているわけです。その差がからだに症状のような形で現れるということです。言葉とからだの反応が違う場合、からだの反応の方が本当です。例えば「うん、いいよ」と返事していても首を横に振っている場合は、本当は「イヤだ」と言っています。
からだが変わりに訴える、返事をする
子どもが学校に行きたくないとき、「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える話を聞いたことが、あるいは経験したことがあると思います。子どもは「学校を休みたい」、「学校に行きたくない」と言ってもどうせ休ませてもらえないとか、怒られる・叱られると思いこんでいます。それでもどうしても休みたいときは、症状としてあらわれます。これは決して仮病ではなく、本当に具合が悪くなります。しかし、休めることが分かったら(=ストレスがなくなったら)、症状が改善することがほとんどです(このとき、病気のサインとして出ている場合もありますので注意深く見てください)。
ということはつまり、その症状が子どもの気持ちを代弁してくれたということになります。このように、言葉で伝えられないとき、からだが変わりに訴えてくれるということをします。それが自分を守る術でもあります。これは子どもだけでなく、大人も一緒です。
からだの症状と意味の目安
身体のどこが具合悪いかも何を言いたいのか、ひとつの目安になります。
その部位がどんなことをする場所か、ことわざ、慣用表現がヒントになります
ひきこもっていた子が急に運動すると、一時的ですが、それまでより疲れを感じてしまうことがあります。それは、筋肉や関節にためていた(抑え込んでいた)感情が外に出るために動き始めたからです。2,3日したら落ち着いてきます。その繰り返しながら徐々に動けるようになっていきますので、休みながらでも身体を動かすように(からだを動かすことなら何でもOK)働きかけましょう。
関節 ・・・ 感情が溜まりやすい → 動くと抑えてきた感情が動き出すので
筋肉 ・・・ 感情が溜まりやすい → 動くことを嫌がる子が多い
表情に出る子・出ない子
子どもの中には、言葉での返事をしない、からだにも症状として出ない子もいます。その場合でもヒントになることはあります。それは子どもの表情です。子どもが返事をしないとき無理に答えさせるより表情に注目しましょう。
難しいのは、無表情の子の場合です。無表情ということは、自分の気持ち・感情を一生懸命抑えているということです。それだけ自分の意見を言うことに不安を感じているということです。そういう子の場合、ときどきそっと「もう我慢しなくていいんだよ」と声をかけてあげてください。
子どものサイン
わたしたちは言葉を使いお互いの気持ちを話したり、聞いたりすることでコミュニケーションをしています。しかしコミュニケーションのツールは、言葉だけではありません。わたしたちも「今日あの人は機嫌がよさそうだ」など、言葉を交わさずともその人の気持ちを察することを常としています。
そして人は、第一印象で人なりを判断することもあり、ゆえにTPOということが大切にされています。また子どもたちは髪の色や形、服装などをコーディネートすることで自己表現をし、それをコミュニケーションのツールとしても使い、それが重要な役割を担っています。
ショックな出来事が起きたとき食欲が落ちる、恐怖を感じたとき息が止まる・青ざめるということがあります。これらも言葉ではなく、心の状態がからだに伝わり、感情がそのままあらわれているわけです。
子どもたちは、言葉を自由自在に扱えるわけではありません。そこでいろいろな表現を用いて、語ったり訴えたりしています。髪型や服装なども自己表現の一種であり、彼らなりのメッセージです。
不登校やひきこもりも、ある日突然始まったかのように感じるかもしれませんが、実はその前に様々なサインを出しています。後から「そういえば様子が変だった」と思い当たることがあると思います。
なんとなく変、なんとなくおかしい・・・など、実はみなさん、子どものサインをキャッチしています。でも理由や根拠があいまいだから、自信を持って対応できない場合が多いのだと思います。親には過去の経験に基づいた判断があり、だからこそ親が子どもに対して感じるなんとなくは、正しい場合が多いのです。
行動に見られるサイン
次のような行動(サイン)が見られたときに考えられる意味(メッセージ)です。
サイン | 考えられる意味 |
病気になる・ケガをする | 行きたくない やりたくない 関心を引きたい 注目を浴びたい 大事にされたい |
頭痛 | 考えすぎ 泣きたいのに泣けていない 寝すぎ |
閉じこもる | 不安・恐怖 拒絶 誰にも会いたくない |
黙る | わからないことの表明 自信がない(怒られるかも) 怒っている |
服装が変化してきた・派手になってきた | 変わりたい 友だちが変わった 有名人の影響 |
お化粧する | コンプレックスを隠す 仮面・武装 変わりたい 年齢的なもの 彼氏ができた 趣味が増えた |
アイライン・つけまつげ | 目を大きく見せたい 誰かに目が細い等、指摘された |
髪を立たせる | 自分を大きく見せたい 強く見せたい 威嚇したい |
お風呂に入らない | エネルギー切れ 何もやりたくない うつ状態 |
親にあたる | 助けてくれ! 甘えさせてくれ 自分の気持ちが伝わらない 病的なもの |
狭いところに行く | 安心したい 不安・恐怖がある |
盗み・万引きを働く | 関心を引きたい 試したい いじめの対象になっている可能性 |
夜遊びをする | 現実から逃げたい 居場所がない 自分だけの世界を持ちたい 独立したい 気を引きたい |
食欲が落ちる | 悩みを抱えている 心配事がある やせたい 自分を責め、罰している |
口数が減る | 悩みを抱えている 心配事がある どうせ自分の気持ちは伝わらない 言いたくない |
部屋が散乱 | こころの中が荒れている 悩んでいる 余裕がない |
夏でも長袖 | リストカット 醜形恐怖 |
マスク | 口元がイヤ 笑い顔がイヤ 顔にコンプレックスがある 話したくない |
かわいらしい話し方・しぐさ | かわいく見られたい、容姿に自信がない、コンプレックスがある |
膝を抱える | 不安・恐怖を感じている 守っている |
ツイッターなどのSNS | さびしい 人とつながっていたい 注目をあびたい 現実から逃げたい |
サインを捉えるときの注意点
以下のようなことに注意して対応しましょう。一番大切なことは慌てないことです。落ちついて対応してください。
①観察する
サインとして表れたものが身体の調子が悪いのか、一時的なものかどうか、一日中だけか、数日間続いているのか、様子を見ましょう。
②全体的包括的に見る
表れているサインだけに注目するのでなく、子どもの生活全般について見ましょう。
食欲はどうか、口数はどうか、友人関係に変化はあるかなど、多角的に見ましょう。
③他の人の印象を聞く
自分だけの思い過ごしなのか、家族や学校の先生に様子を聞き参考にしましょう。
特に学校では、昼休みや授業と授業の間の休み時間の様子が大切です。
④専門家に相談する
自分の中の不安が強い、よくわからないときは専門家に相談しましょう。
子どもに対する自分の不安やとらえ方が整理でき、安心につながります。
※成長の一過程で出てくる場合もあります。神経質になり過ぎないようにしましょう。
子どもへの問いかけの方法
疑問を感じたら一度子どもに聞いてみましょう。そのときの聞き方は、「お母さんには○○(例.食欲が落ちている)のように見えるけど、最近何かあった?」と自分が感じていることとして聞いてみましょう。そのときに子どもがどんな表情で、どんな答え方をしたかもヒントになります。たとえば返事をせず黙ってしまう、あるいは怒りだしたときは、その可能性があります(人は急所をつかれると怒りだす傾向にあります)。
その可能性があると感じた場合は、できるだけ早くカウンセラー、学校の先生などの専門家に相談してください。身体の病気と同じで早く対応することがとても重要です。
カウンセリングの中でのサインの例
最後にカウンセリングの中で出会ったサインの例をご紹介します。箱庭と絵画の例です。
❖箱庭で表現した子
・ビル火災の屋上に人形を置く・・・取り残された自分と逃げ場がないことをサインとして表現
・戦争の場面を置く・・・自分の中にある大きな葛藤をサインとして表現
・お墓を置く・・・今の自分から新しい自分に生まれ変わりたいことをサインとして表現
❖絵で表現した子
・「先生を画いて」という依頼にゴジラを画いた子・・・先生が
とても怖いことをゴジラというサインで表現する
以上のように子どもたちはいろいろな形で自分の気持ちを表現します。
ウソをつく子 見栄をはる子
「ウソをつく」ことと「見栄をはる」ことはとても関連しています。過度に見えっぱりな子(カッコをつける子)ほどウソをつく傾向にあります。
「見栄をはる」ことはウソにつながる可能性を秘めています。見栄をはる傾向のある子の場合、まず親自身が「見えっぱり」かどうか振り返るのが早道です。
親があまりに「見えっぱり」の場合、それを真似るか逆に嫌う傾向にあります。見栄をはるとき、そのためにがんばるなら、それもいい動機づけになりますが、そうでない場合は見栄をはり続けるために結果的にウソをつくことになります。一度ウソをつくとその段階からウソをつき続けなければいけなくなり、結果的に本人も苦しくなり、最終的にはウソがバレてしまい、ひどい場合には信頼関係が崩れるというマイナスな結果を生みだします。
中にはウソをつくことをやめたいと思っても、「見栄(カッコつけたい)」が邪魔をしてやめられないという悪循環におちいっていく場合もあります。
なぜ見栄をはるのか?
見栄をはる理由はおおよそ下記のようなものが考えられます。
①モデルがいる(親が見えっぱりなど)
②自信がないけど、それを悟られないようにしたい
③気が小さいから大きく見せたい
どう対応したらいいか?
①の場合は親が自分の行動をまず振り返りましょう。子どもにやめてほしい場合は、親自身が見栄をはり失敗した経験を話したり、子どもの前では見栄をはることをやめることが効果的です。
②、③の場合は自尊感情を育てることに取り組んでみましょう。そのためには子どもが何かしたときには必ず出来た事や良かった過程を褒めていきましょう。そうすることで自尊感情が育ち、いい意味で「自分は自分」と思えるようになり、自分が小さいとか大きいとかなどが問題にならなくなります。
どんなときにウソをつくの?
・実行できていないとき(行動しなかったとき)
・自分をよく見せたいとき(カッコつけたいとき)➝ これが見栄をはるとき
・本人がウソと思っていないとき
・怒られるという不安や恐怖があるとき
・その場から逃れたいとき
・人のために行動したとき
・悪意のあるとき
上記のことがよくみられることだと思います。ただ最初からウソをつこうと思ってついた子はいません。たとえば親から聞かれて返事をしたとき思わず「うん」と答えてしまい、それでその場がしのげてしまったという体験を持ち、「ウソをつくことで困った状況を脱することができた」という成功体験をしたわけです。その後同じように困った状況におちいったとき、過去の成功体験を無意識のうちに思い出して、ウソをついてしまうのです。
どう対応したらいいか?
では、子どもがウソをついたとき、どのように対応したらいいのでしょう。
まずよほど悪質なウソでない限り頭ごなしに怒らないでください。先に頭ごなしに怒られてしまうと、萎縮してそれ以上話せなくなる子が今の時代多いからです(耐えられる強さのある子は逆の順番でもOKです)。ウソをつくには必ず理由があります。その理由を聞いてから怒るのではなく、注意あるいは叱りましょう。
≪対応方法≫
・なぜウソをついたか理由を聞く
・ウソをつくことで手に入れようとしたもの(目的)を聞く
・ウソをつくメリット・デメリットを考えさせる
・注意する、叱る
・親も自分のことを振り返る
〔日常の中で意外に子どもの前でウソを言っている親が多く(例:家では嫌いな人の悪口を言っているのに、外に出ると同じ人のことを賞賛しているなど)、子どもはそれを冷静に見ており矛盾を感じながらも、一番身近な大人である親がしているので、自ずと身につけていきます。〕
子どもがウソをつく外的要因を考える
子どもがウソをつくとき、子どもを取り巻いている環境が影響している場合があります。あまりに子どもがウソをつくようでしたら、一度彼らを取り巻く環境に目を向けてみましょう。
・交友関係
・親としての自分(たち)の言動
・親としての自分(たち)が子どもに期待していること
秘密とウソ
ウソと関係しているものに「秘密」があります。この「秘密をもつ」ことは幼少期、思春期における成長にとても大きな役割を果たします。このウソと秘密を見分ける方法は、当たり前ですが、ウソは話しますけど、秘密は話しません。そして秘密は友だちと共有される場合が多いのが特徴的です。このことはぜひこころに留めておいてください。
・幼少期 親に対して秘密を持つ ➝ 成長(仲間意識や耐性力)
・思春期 親との世界 VS 友人との世界 ➝ 成長(自立への道)
なぜ動けなくなるの?
実は、動けないということは特別なことではありません。人は何かに取り組むときに生じるストレスを、小さいうちに解決することができれば動き続けられますが、我慢してやり続けたり、無視してやり続けたりすると動けなくなってしまいます。
ではどんなストレスを抱えていると動けなくなるのでしょう?
ストレスには、マイナスの面とプラスの面があります。疲労感や挫折感、失敗に対する不安や恐怖などはマイナスの面といえ、これらが過度になると人は動けなくなります。ストレスのプラスの面というのは、人が行動するときの動機づけになります。期待や理想、完璧主義などがプラスのストレスといえます。しかしこれらも、過度になるとわたしたちには重荷になり、最終的に動けなくなってしまう可能性があります。
それでは、実際に動けなくなる子がどのような気持ちを感じているか、性格傾向か、説明していきます。
①限界を超えた疲労感
自分の意見・気持ちをなかなか言えない子、断れない子、やさしい子などは我慢しがちな傾向にあります。このような子どもたちは、自分の気持ちを自分の奥底にどんどん追いやっていきます。つまり自分の中に溜めこむのです。自分の中にある溜めこむ場所は実際には目に見えませんが、決して無尽蔵ではなく、限界があります。そしてそこに達してしまったとき、動けなくなります。心の中にとても重たい重たい重石を抱え込んでいる状態です。
このようなときはとにかく休ませてあげましょう。そしてやさしい気持ちでいたわってあげましょう。「今まで良くがんばってきたね」「もう無理しなくてもいいよ」「ゆっくり休もうか」など家族のあたたかい気持ちで、子どものため込んだ気持ちをゆっくり溶かしてあげましょう。
②大きすぎる期待・高すぎる理想(他者から)
家族や先生から大きすぎる期待をかけられている子も動けなくなる可能性があります。それは期待という見えない重石が身体中にぶら下がっている状態です。自分が大きな石や鉄の塊をぶら下げていると想像してみてください。
あるいは自分の子どもが自分にぶら下がっている状態を想像してみる、または実際にぶら下がってもらってもいいかもしれません。その状態で前に歩いてみてください。前に進んで歩くのはむずかしいでしょう。歩けたとしても、すぐに休みたくなってしまうと思います。
期待が大きすぎて動けないことがわかったら、期待をはずしてあげましょう。それがむずかしかったら、その子が生まれてきたときのことを思い出してください。きっと生まれてきてくれたことだけで幸せを、感謝を感じたと思います。それを思い出してください。
③高すぎる理想(自ら)・完璧主義
②とは反対に自分で高すぎる理想をもってしまう子もいます。それも動けなくなる理由の一つになります。高すぎる理想は同時に「・・・あらねばならない」という考えとセットになっていることが多いからです。この「・・・あらねばならない」が強ければ強いほど動きが制限されてしまいがちです。
このような場合は、その理想を否定するのではなく、まず受け止めて、それに近づくためには何が必要か、目標を少しずつ低くすることをしてあげてください。階段をひとつずつ降りる感じです。そうすると、それが自分の理想につながっていることもわかっていますし、今取り組むことが一番低い目標になりますので実行しやすくなります。
完璧主義な子も動けなくなる可能性があります。「完璧にできないくらいならやらない方がマシ」という考え方です。これは次の「⑥失敗体験に弱い」とも関連しています。
④挫折感
挫折感を感じたときも人は動けなくなります。このときはまずゆっくり休ませてあげましょう。
この場合むずかしいのは、再チャレンジができるかどうかです。尻込みしてしまう可能性もありますので、急かさないようにしましょう。
⑤頭で考えすぎる=石橋を叩きすぎて壊してしまうタイプ
考えすぎる子どもも動けなくなる可能性があります。またこういう子はあまり動かずじっとしている傾向にあります。
このような子は、声を出す、家事を手伝う、その場足踏みなどでもいいので運動をするなど、からだを動かすことが助けになります。からだを動かすと頭が空っぽになるという経験をみなさんもお持ちだと思います。最初は親子で一緒にやってみるというのもいいでしょう。
⑥失敗体験に弱い
失敗が恐ろしい子も動けなくなる可能性があります。失敗する自分の姿を想像しただけで動けなくなる子もいます。こういう子には自分が成功しているイメージを誘導してあげるといいでしょう。
失敗というのは、行動した結果だということを伝えていきましょう。失敗した結果ではなく、行動に起こしたことを褒めてください。それからその行動のプロセスを一緒に振り返って、やり直すといいでしょう。そうすることで、失敗することに対しての恐怖が減少していき、少しずつ自信がついてきます。
また失敗は悪いことではなく、失敗が成功を生むという体験(喜劇で元気プロジェクトなど)ができるといいでしょう。みなさん(親)の失敗体験を話してあげるのも勇気づけになります。
⑦身を守るものが動きを制限する場合がある
何がしかの問題を抱えた子どもの中には、自分の身を守るために目には見えない防具のようなもの(鎧とか盾とか壁のようなもの、図1、2)を装備する子もいます。それが重装備であればあるほど、実は行動を制限するものにもなってしまいます。
しかしその防具は、目に見えない分わかりにくいと思います。
ひとつの目安として、第五段階の再活動希望期(p37)に入ったものの行動になかなか結びつかないときに、もしかしたらそのような場合が考えられます。そのようなときは、母親や父親が提案するだけでなく、一緒に行動もするとよいでしょう。なぜなら母親や父親が防具の役目を果たしてくれるからです。それを続けていくことで重装備な防具をはずしていくことができます。
【対応策】
a.今の状態に気づく。
b.ストレスの解消の仕方、回避の仕方を練習する。
c.少しがんばって動いて達成感を得る。
d.新しい方法を身につける。
以上のような対応策がありますが、なかなか難しいかもしれません。できるだけ早く専門家の手を借りましょう。
カウンセリングの体験談
=息子の不登校時代=
N・Kさん
中2の秋、息子は起立性低血圧という病名をいただいて不登校を認められました。
よくよく考えれば小学校の高学年頃から朝がなかなか上手に迎えがたいようでしたが、その頃の私は身体のことだなんて思い及ばず、気持ち(気合)の問題だと彼を責めて、彼が学校で失敗しないように必要以上にあれこれ世話を焼いていたように思います。
不登校を認められた彼に、私のしたことはゆっくり休ませるということではなく、学校に行かない分、学校に行っている人以上の経験と体験をさせたいという気持ちの押し付けでした。
主治医からは「何もするな。何も言うな。」と言われてからは言葉には出さなかったかもしれませんが、そういう気持ちを常に持っていたので彼にはつらかったかもしれません。
そんな中、新聞でみた不登校・高校中退者のための学校相談会で、田中先生と出会い、お世話になることになり、『親子の「こころ」教室』で悩んでいるお母様達と出会い、本当に救われました。
今年の4月から息子は自分の体調でも通える学校に心身共に何とか折り合いをつけ通っています。
最近の私は、過去の後悔と未来の心配でずいぶん忙しく、今を見ることが出来なかったことに気付き、今日を楽しく過ごしています。
昨日、息子とゆっくり話すことが出来た時、今の彼は過去の苦しみと未来への不安で大変なんだと知りました。
でもいつか息子が「今を楽しむ」ことを選択してくれると信じて過ごしていきたいと思います。
=息子と共に歩んだ道=
M.Yさん
長男は高校3年生の2学期より学校へ行けなくなり苦しい日々でしたが、自分をとり戻し、今は楽しい大学生活を送っています。
学校へ行けなくなる1年程前から朝が起きづらくなり、通学途中の電車の中や学校で気分が悪くなったりすることがあり、車で送り迎えをすることもしばしばありました。疲れている様子でしたが、学校へ着くと最後まで授業も受けれるし、大丈夫だと思っていました。なんとか通えていたんだということが、今となってはわかりますが、その時は学校へ行かそうと必死になっていて、子どもの極限の状態がわかりませんでした。
体が動かなくなり、学校へ行けなくなったのが大学受験間際の秋。中高一貫の進学校に通っていましたが、中1から学校を休むことはなく大変真面目に学生生活を送り、成績も優秀でしたので、行けなくなった時には絶望感でいっぱいでした。何故、あんなに学校へ行けないことが悪いことだと思ってしまったのかわかりません。病気や怪我で、長期療養で学校を休まざるを得ない状態だと思えたらよかったと思います。
本人は学校に行かないといけないのにしんどくて行けないと言い、せっかく今まで頑張ってきたのに悔しいと泣いていました。怠けて休んでいると思われていると思っていて、友人からの連絡にも一切返事をすることができなくなっていきました。この状態をきちんとわかってほしいという思いが強くあり、校長先生、担任の先生、友達に説明するために学校へ出向きました。わかっていただけたのが救いでした。
ほぼ一日中ベットの中、食事は一日一回少しとるだけで見る見る痩せていき、大変心配で、こちらもで眠れぬ日々が続き、物音に過敏になり、聴力がよくなったかのようでした。
心療内科へ行っても、薬を出されてゆっくりしなさいと言われるだけ。薬を飲んで余計に体調をこわすことになり、悩んでいる時に田中先生に出逢うことができました。それから先生の暖かいお導きにより暗い闇の中から脱出することができました。
田中先生と親子のカウンセリング、子どもだけのカウンセリング、自宅まで来ていただきカウンセリングもしていただきました。何かことが起こる度に先生にお電話して聞いていただいていました。ジタバタしていたことは恥ずかしい限りです。
当時は過去を振り返り、あれが悪かったのか? これが悪かったのか?あの時こうすればよかったのか? 自分の接し方が悪かったと自分を責め、時には周りの人せいにし、心配ながらも篭っている子どもにも腹を立てました。どう接したらいいのかわからず、精神状態がおかしくなり、元気な同年代の子どもの姿を目にすると羨み、涙することもありました。
視野が非常に狭くなっていて、他の人の言葉には “どうせ私の気持ちなんてわからない” “そんなことわかっているけどできない” と、意見を素直に聴く耳を持てていませんでしたが、田中先生とお話すると納得することばかりで、スッキリしてとても落着きましたので、私が一番カウンセリングが必要だったのかもしれません。
子どもにも私にも具体的にわかりやすくアドバイスしていただき、進めて頂きましたが、当時教えて頂いたことはすべてそのとおりでした。
行動には何でも意味がある 意味を考える
子どもを理解する
子どもをゆっくり休ませる
子どもを信じて見守る
色んなものを投げてみる 投げなければヒットもしない
これらの事をできるだけ心に刻み、たまたまタイミングよくヒットして前に進みました。
渦中はなかなかできないことでしたが、過ぎてしまえばもっと落着いて構えていればよかったと思います。
子どものことを理解し、周りが一丸となって焦らずゆっくり進むことではないかと思います。
「学校で起きたことではあるけれども、家族の中で起こったことは家族の問題であって家族で解決しないといけないですよ。家族の一番弱いところに出ただけです。」と田中先生がおっしゃった言葉がすごく響き、家族がそれぞれ自分を見つめ直し、変わり、子どもが立ち直りました。
子どもは一番辛い経験をし可哀想でしたが、“家の救世主”であったことは間違いないとつくづく思います。
最後になりましたが、私自身の心の支えになった場が月に一回ある【親の会・ココロの教室】です。
同じような不安や悩みを持つ保護者の方々のお話を聞いて、また聞いて頂いて気持ちが楽になりました。この場がなければ自分を保てなかったと思います。
悩みをわかってもらえて、感情を包み隠さず吐き出せる場があって本当に良かったです。
田中先生に出逢えたことに感謝し、また先生を通して心の友が沢山できたことも子どものおかげです。
少し遠回りしましたが、子どものことがきっかけで親子共々で得たものは計り知れません。
これからまだ心配はありますが、その都度ジタバタせず子どもを信じて乗り越えて行こうと思っています。
あなたを支えてくれる人・ものが必ずあります
みなさんには悩みを相談できる人がいますか?または、普段から愚痴をこぼせる人はいますか?なぜこのような質問をしたかというと、子どもが不登校になった多くの保護者が陥っている状態に「他者に頼らず何もかも自分で抱え込む」ということがあるからです。この状態が長く続くと、徐々に苦しくなり、最後には親子で共倒れになってしまう可能性があります。
人は悩んでしまうと視野が狭くなりがちで、差し伸べられた手にも気づけなくなってしまいます。また自分が今いる場所からも離れられなくなってしまいます。でもほんのちょっと顔を上げて周りを見回したら、あなたを助けてくれる人がそばにいたり、気持ちを整理し自分を取り戻せる場所があることに気づくはずです。そのことをぜひ知っていてほしいと心から思います。
あるお母さんが言っていました。
『今まで自分の子どもが学校に行っていないことは、絶対に話せないと思って隠していたのですが、もうどうしようもなくなって、あるお母さんについ話してしまったんです。そうしたら、そのお母さんが「実はうちの子もそうなのよ。」と打ち明けてくれて、とてもびっくりしたけど、すごく安心したんです。人に話すことも大事なんだなとあらためて思ったんです。』
また他の母さんが電話をかけてきて、
『子どもが急に不機嫌になり、わたしに当たりだしたので、買い物に行ってくるからと言って出てきたんです。ついでにお気入りのカフェに来て、今コーヒーを飲んでいるところなんです。ここにくる気持ちが落ちついてくるんです。』
と話してくれました。
ほんのちょっと勇気を出して周りを見回してください。きっとあなたを支えてくれる人や場所が見つかります。
あなたは決して一人ではないということをあらためて知ってください。
それを知っていただくためにぜひ次ページのあなたのこころの拠り所シートを書いてみてください。
それでは、拠り所シートには何を書いたらいいのでしょう?
あなたが安心して話ができる家族や友人、大好きなペットの名前、あなたにとって特別の場所、お気に入りのお店もいいと思います。また趣味、スポーツなどを書いてもいいでしょう。他にもあなたを癒してくれる人・もの、ホッとさせてくれる人・もの、元気にしてくれる人・もの、何でも思いつくまま書いてみてください。
また学校の先生やカウンセラー、病院の先生などの専門家があなたのこころの拠り所になっている方は、それらも書き出してください。
あなたのこころの拠り所を書き出してみましょう。